ハングル講座を見ていて

 

 NHK「テレビでハングル講座」を見ていて、それも第14課、つまり7月の放送分を見ていて(追いつけていないのも問題ではあるが)、気になったことがある。

この番組ではGOT7という韓流アイドルが会話を演じている。メンバーの一定数はハングルのネイティブであるから、それなりに発音も参考になるのだろうが、時々彼等が日本語を話すときもある。

第14課で言うと、最後、会話練習のコーナーでヨンジェさんが日本語を話した。思うところがあったのは、その内容ではないのだが。

一応内容としては、「僕は必要です。君の電話番号、ください。電話番号。本当にきれいです」というもの。日本語の教科書の例文の単語を置き換えただけ、のような風があってかわいらしい。この番組自体、女性視聴者を意識しているところがあるので、女性に向けたセリフなのだろう。

気にかかったのは、この「電話番号」という発音。一度言った後、もう一度言い直している。おそらく自分の中でも違和感があったか、日本語の先生に習った通りに発音しなおしてみたのだろう。二度目の「電話番号」と言うときには、これでもかというほどに「で」と強く発音している。

この辺りが面白いところで、韓国語には濁音という概念が希薄だと言えるのだと思う。

韓国語の子音の中には、ある一定の条件を満たすと語中語尾で濁音化してしまうものがあり、「t」を意味する子音もそこに当てはまる。つまり、語中語尾では「d」になってしまうことがあるのだ。

日本人はこう理解するし、それで間違いない。基本的には「t」の音だが、一定の条件のもと語中語尾では「d」になる。それを防ぎたければ、強く発音する激音というものにする。

ただしハングルのネイティブはそうではないらしい。彼らは「t」と「d」が聞き分けられない。語頭の「t」が語中語尾にあって「d」になってしまうとしても、それはかなり無意識であるようだ。

というわけで、「電話番号」と言おうとすると、語頭に「で」つまり「d」が来る。これはハングルのルールでは「t」になってしまうから、「てんわばんごう」と言ってしまう。それを彼は強く「て」を発音することで、「で」に近づけようとしたのである。

と考えると、中国語にも似ている問題がある。

中国語には濁音が無い、という考え方をする人がいる。かくいう私もそれに近い考え方をしているが、中国語の「b」と「p」というようなものは、強く空気を出す(有気音)か、口を押し開くようにゆっくり空気を出す(無気音)という違いの上に成り立つものであって、日本語の「ぶ」と「ぷ」のような違いにはならない。どちらかと言うと近いのは「ぷ」であって、「ぷ」と言うときの唇の開きをゆっくりにすると「b」に近づき、強く言うようにすると「p」になる。

というようなことを、7月のハングル講座を見ながら思った。ハングルは科学的な一面、なんだか間抜けに思えるところもあるような気がして、面白い。ただそれは、英語を学ぶときの、アルファベットの機能性に対して抱いてしまう劣等感のようなものの裏っ返しなのではないかと、少しだけ肌寒い思いをした。